クラリネット呼吸法|肋骨と胸郭で反射的吸気を習得
- 4月1日
- 読了時間: 6分
更新日:4月14日
音色も、タンギングも、フレーズの流れも。実はその土台にあるのが「呼吸」です。この記事では、クラリネット呼吸法の観点から整理します。
クラリネット呼吸法の基礎:肋骨と胸郭の役割
山口県柳井市のフジヤマクラリネットスタジオでは、クラリネット演奏にとって重要な呼吸を、感覚や根性論だけで終わらせずに“しくみ”から整えることを大切にしています。
無料でダウンロードできる「呼吸トレーニング」PDFを配布 (ブログ参照)
オンライントレーニングで、呼吸と身体の協調を継続的に扱ってきました。
今回は、国際クラリネット協会(ICA)機関誌 The Clarinet(年4回発行)に掲載された Shawn Copeland / Jackie McIlwain の記事から、「肋骨」という視点で呼吸をアップデートするヒントを紹介します。
クラリネット呼吸法として、この記事で取り上げていること
「息を吸う」は、がんばって“取りにいく”動作ではなく、肋骨と横隔膜の協調で起こる反射である。
クラリネット奏者が見落としがちな呼吸の要素として、肋骨が動くことに意識が向いていない場合がある。
肩や喉を固めず、上部肋骨も含めて胸郭全体が関わることで、静かで十分な吸気が戻ってくる。
出典:International Clarinet Association(ICA)機関誌 The Clarinet(Quarterly)に掲載された Shawn Copeland / Jackie McIlwain による Pedagogy Corner 記事をもとに要点を整理しています。オンライン購読はメンバーシップが必要です。
キーワード:肋骨は「広げる」より「スイングする」

肋骨は英語では”ribcage”いわゆる“鳥かご”をイメージできますが、そのような固定された枠ではなく、小さな関節の集合として、呼吸に合わせて回転・スイングすると表しています。
肋骨の可動性とは
肺そのものが空気を引っ張るのではなく
肋骨、胸骨、脊柱、横隔膜など周囲の構造が形を変え
その結果として内圧が変わり、空気が流れ込みます
特に、鎖骨の下〜背中側にかけての上部にも肺の容積が大きく存在するため、肋骨上部が呼吸量に大きく関わるとのこと。
“効果的なようで的を得ていない”呼吸指導あるある
以下のような指示では、かえって肋骨の可動をフリーズさせてしますことがあると著者は述べています。
「肩を絶対に動かさない」
「お腹を膨らまして(お腹を押し出して)吸う」
「喉を開けて(=何か動作をする)」
「常に満タンに吸う」
ポイントは「動かしてはいけない場所」を増やすのではなく、余計な固定を減らすこと。
実践ワーク:反射的吸気を習得する3つのステップ
実践 1:肋骨の“戻り”が吸気を呼ぶ(反射的吸気)
まず普通に吐いて止める(吸わない)。
もう一度吐く(まだ残っていることに驚くかもしれません)。
さらに吐く。(まだまだ吐けました)
そのまま、喉を締めずに待つ。
すると、身体が勝手に「一瞬で、静かに」吸い始めます。
次のフレーズを決めるのは、どれだけ大きく吸うかよりも、前の息をどれだけ明確に解放できるかを意識。
実践 2:上部肋骨と肩帯は“浮く”
多くの奏者は「肩を上げない」を守ろうとして、脇や肩甲骨周りを固める傾向。
胸骨と鎖骨がつながる関節(胸鎖関節)
鎖骨と肩甲骨
肩甲骨と上腕骨
この連鎖が呼吸と連動します。
体感ワーク
両手で自分を抱きしめるようにして、指先を脇に軽く入れる。
肋骨の横(+背中側)が広がるのを感じながら吸う。
次に脇をギュッと締めて同じように吸い、呼吸の質の違いを観察する。
実践 3:「喉を開ける」は“操作”ではなく“休ませる”
いわゆる鼻の奥から喉に当たる咽頭は硬い筒ではなく、筋で支えられた可動性のある空間。
嚥下に関わる筋が収縮していない限り、喉はすでに開いていること。
「開けよう」とすると舌を下げる動作が起きやすい
それが下咽頭を狭め、タンギングやボイシングを乱しやすい
代替キュー:
気道を「気管からリードの開口へ続く長い共鳴の通路」と捉える
舌は前方で休ませ、必要な範囲でボイシングを整える
まとめ
肋骨の可動域を開放すると、息は“取りにいく”ものではなく“戻ってくる”ものになり、音色とアーティキュレーションの自由度が上がる。
引用・参照
Shawn Copeland / Jackie McIlwain, Pedagogy Corner: Part 1 — Inhalation: When Balance Breathes For You(ICA The Clarinet)Vol.53 No.1 December 2025
Shawn Copeland / Jackie McIlwain, Pedagogy Corner: Part 2 — The Expressive Exhale: When Rib Movement Returns to the Map(ICA The Clarinet)Vol.53 No.2 March 2026
考察
これまで私は、呼吸に関わる筋肉が「どう働くか」に意識を向けてきました。そこに今回、「肋骨がどう関わるか」という視点が加わったことで、呼吸をより立体的に捉えられるようになり、大きな学びになりました。
特に、吸気を“筋肉で取りにいく動作”として頑張るのではなく、肋骨や胸郭の動きによって呼吸が自然に戻ってくる、という理解は、これまでの見方を更新するきっかけになりました。今後は筋肉の働きだけでなく、肋骨の可動や胸郭全体の協調にも注意を向けながら、より無理のない呼吸と演奏の安定につなげていきたいです。
興味があれば、ぜひICAメンバーになってThe Clarinetをチェックしてみてください。
**JCA日本クラリネット協会の会員特典として、ICAのメンバーシップ特典もついてきます。ぜひ合わせて考えてください
新コースを作りました:オンライン+1対1オンラインセッション(全4回)で、呼吸をさらに深く整える
「肋骨編」の記事で扱ったのは、吸気を“頑張って取りにいく”のではなく、肋骨・胸郭の動きが戻ることで反射として吸気が起こる、という視点でした。
この視点は、呼吸トレーニングを「その場で分かった気がする」で終わらせず、演奏の中で再現できる形にするためにとても重要だと感じています。
そこで今回、これまでのオンライン内容をベースにしつつ、より深く・個別に取り組める形として、**オンライン+1対1オンラインセッション(全4回)**のコースを新しく作りました。
なぜ“肋骨”が鍵になるのか
呼吸の悩みは、意識や根性で改善しようとすると、逆に
肩や喉が固まる
胸郭が動かなくなる
息の通り道が狭くなる
という「固定」が増えやすい側面があります。
肋骨(胸郭)の可動が戻ると、吸気は操作ではなく“戻ってくる”ものになり、音色・タンギング・フレーズ感に余裕が生まれます。
コースで扱うこと(例)
肋骨・胸郭の可動を“地図に戻す”(上部肋骨〜背中側も含めて)
吐ききる→反射的吸気を呼ぶ流れを、演奏の呼吸に落とし込む
喉・舌・肩帯の余計な固定を減らし、息の通り道を整える
「どこを観察すれば立て直せるか」を言語化して、再現性を上げる
形式:オンライン+1対1(全4回)
1対1のオンラインセッションを週1回×4回行い、
その方の固まりやすい場所
息の入り方の癖
楽器・曲・本番状況
に合わせて、改善ルートを一緒に作っていきます。
コース紹介ページ
詳細は、こちらのページにまとめました。
管楽器奏者のための呼吸トレーニング|コース紹介

