クラリネットの指が回らない原因は運指?ローズ14番の小指の選び方
更新日:3 日前
クラリネットで「指が回らない」ときは、練習量より運指の選択を見直す
クラリネットで指が回らないと感じたら、練習量を増やす前に運指を見直しましょう。ローズ32の練習曲14番を例に、小指を左右どちらで取るかの考え方と練習手順を解説します。
クラリネットの「指が回らない」原因は3つに分けて考える
「指が回らない」と感じると、もっとゆっくり、もっと何度も練習しようと考えるかもしれません。
でも、その言葉の中には、異なる難しさが含まれています。運指の選択が音の並びに合っていないのか、左右の手の動きを合わせにくいのか、跳躍やアーティキュレーションを伴う動きでつまずいているのか。確認したいことも、練習の組み立て方も変わります。
そこで、これまでの発信では、次の3つの視点に絞って紹介しました。
運指の選択:前後の音に合った、効率のよい運指を使っているか。
左右の手の協調:キーを離す動きと押す動きのタイミングが合っているか。
アーティキュレーションと跳躍:音の離れ方やスラー・スタッカートを含む音の並びで、どこにつまずくか。
動画1|指が回らないときに確認したい3つの視点
まずは、ローズNo.6を使った動画をご覧ください。運指の選択、左右の手の協調、アーティキュレーションと跳躍という3つの視点を紹介しています。
どの視点が、ご自身のつまずきに近いでしょうか。気になるところを意識しながら、以下の解説へ進んでみてください。
Instagramで問いかけ、次に跳躍を取り上げました
Instagramでは、どこに難しさを感じるかをアンケートで問いかけました。その後、跳躍をテーマにしたリールを投稿しました。
ローズNo.10の譜例を使った投稿では、複数の音の並びを示し、「どの跳躍が難しいと感じるか」を問いかけています。
同じ「跳躍が苦手」でも、難しく感じる箇所を具体的にすることが、練習を考える入口になります。すべてをひとまとめにして繰り返すのではなく、どの音からどの音へ移るところでつまずくのかに目を向けてみましょう。
跳躍に続いて、今回は「運指の選択」を詳しく
ここまではSNSと動画でお伝えしてきました。この記事では、その流れを振り返ったうえで、次のテーマである運指の選択を詳しく取り上げます。
ゆっくり練習しても同じところでつまずくとき、使っている運指が適切か、音の並びやフレーズの構成に基づいた効率的なものかを確認してみましょう。
ローズNo.14の一節を使い、調と音階を確認する→小指の運指を選ぶ→左右のパターンを見つける→切り替えを滑らかにつなぐという順序で考えていきます。これまでの投稿を見ていない方も、ここから取り組めます。
取り上げるのは、ローズのエチュードNo.14の最後から4小節目からの2小節間です。
ローズ14番で確認する小指の運指(動画つき)
こちらの動画では、ローズNo.14の譜例を使い、小指の運指を選ぶ理由と、左右の切り替えを滑らかにつなぐ練習を実演します。
Dメジャーの音階を土台に、小指の選択を考える
前後の音に合わせたL/Rの選択と、音のつながりを比較する
左→右→左→右のパターンを見つける
2音ずつ停止する練習から、シームレスなつながりへ整える
動画で動きと音を確かめ、以下の画像1〜3で理由と練習手順を振り返ってみてください。まずは書き込みのない譜例で、ご自身の運指を確認しましょう。
今回使用した楽譜
この記事で取り上げたのは、『ローズ32のエチュード』の14番です。前後のフレーズも含めて練習したい方は、楽譜を手元に置いて取り組んでみてください。

画像1|みなさんは、どの運指を使いますか?

この2小節を吹くとき、みなさんはどの運指を使うでしょうか?
小指を使う音に、L(左)/R(右)を書き込んでみてください。いつもの運指を、どのように選んでいるか確認してみましょう。
まずDメジャー(ニ長調)の音階で左右の小指の使い方を確認する
運指を考える前に、まず、このエチュードがD major(Dメジャー/ニ長調)で書かれていることを認識しましょう。
調号はシャープ2つ。基本となる音階は、D–E–F♯–G–A–B–C♯–D(レ・ミ・ファ♯・ソ・ラ・シ・ド♯・レ)です。ここではクラリネットの記譜上の調を指しています。
そして、Dメジャーの音階を、音の並びだけでなく、小指をどちらの側で使い、前後の音をどうつなぐかまで含めて習得しておくことが大切です。
なぜなら、この調の音階で身につけた小指の使い方が、エチュードの運指を考える土台になるからです。音階練習と曲の練習を、別々のものにしないようにしましょう。
まずは、この一節に出てくる音域を含めてDメジャーの音階を吹き、自分の小指の使い方を確認します。そのうえで、エチュードの音の並びに当てはめて考えます。
ただし、音階の運指をそのまますべての箇所に当てはめるわけではありません。跳躍や臨時記号を含む実際の音の並びに応じて、選択を見直します。
クラリネットの小指の運指はどう選ぶ?「出せる」と「つなげられる」の違い
クラリネットには、左右どちらの小指でも出せる音があります。
最初に覚えた運指を、その後も使い続けていませんか? 一つの音が正しく出せても、その運指が前後の音へつなぎやすいとは限りません。
「この音をどう出すか」に加えて、「前の音からどう移り、次の音へどうつなぐか」を考えることが、運指の選択です。
運指を変えると、なぜ動きやすさが変わるのか
同じ小指で続けて別のキーを操作する場合には、キー間の移動が必要になります。左右に分担できるところでは、その移動を避けられる場合があります。
これは、指をもっと速く動かして解決することとは違います。必要な動きそのものを見直し、音の並びに合う組み合わせを選ぶということです。
ただし、左右を交互に使えばよいわけではありません。音色や音程、楽器の仕様、前後のフレーズも踏まえて選びます。
効率のよい運指は、速さのためだけでなく、音を無理なくつなぎ、音楽を表現するための選択でもあります。
画像2|音階の基本から、曲に合う運指へ

まず、ここで土台にするDメジャーの音階では、(シ)は左の小指(L)、C♯(ド♯)は右の小指(R)を基本として身につけます。
では、曲の中でもBを必ず左で取ればよいのでしょうか?
この譜例でLと示した、臨時記号の♯が付いたシ#音は、私は左の小指で取っています。なぜなら、ド#を右の小指(R)で取る必要があるからです。(以降で理由は述べます)
ローズNo.14で、いつもの運指と比べてみる
まずは、譜例の一節をいつもの運指で吹き、自分が使っている小指をL(左)/R(右)で書き込んでみましょう。
次に、つまずく箇所の前後を見ます。
同じ小指で別のキーへ移動するところはあるか
左右どちらでも出せる音を、別の側へ変えられるか
変更すると、その次の音への移り方はどうなるか
選び直した運指に少し慣れてから、同じ無理のないテンポで吹き比べます。
確認したいのは、速く吹けるかだけではありません。小指の移動、音のつながり、リズムの安定、手の余分な力がどう違うかを確かめてみてください。
画像3|一つずつの運指から、左右のパターンを見る

画像2では、注意すべき音の小指の選択を確認しました。画像3の青字は、そこから視野を広げ、左→右→左→右という、左右の小指の使い方のシークエンス(順序のパターン)を示しています。
一つずつの音を見て「ここは左、ここは右」と覚えるだけでなく、フレーズの中で繰り返されるパターンを見極めることが大切です。
ここでいうシークエンスは運指の順序を指し、楽典上のゼクエンツ(反復進行)とは区別しています。また、すべての音で小指を交互に動かすという意味ではありません。
小指の運指を定着させる練習法|2音ずつ止めて切り替えを確認
パターンが見えたら、いきなり全体を通すのではなく、2音ずつ吹いて、一度停止する練習を行います。
左右が切り替わるところを含めて取り出し、どの小指でキーを押し、どの小指を離すのか、その順序とタイミングを確かめます。
停止する時間は、動きを確認し、次の動きを準備する時間です。左右の切り替えを「脳にインプットする」、つまり、繰り返し確かめながら動きの順序を覚えていきます。
左→右→左→右というパターンを見つける。切り替えを短く取り出して覚える。そして、つなぐ。
動きが安定したら、停止を少しずつ短くし、隣り合う組をつなぎます。最後は停止をなくしてフレーズへ戻し、切り替え部分で音が途切れたり、リズムが崩れたりしないように整えます。
目指すのは、運指の切り替えが音楽の流れを妨げず、シームレスにつながることです。
※「脳にインプットする」は動作学習を表す指導上の言い方です。今回の資料から、この2音ずつ停止する練習が特定の脳領域や半球間の連携を改善すると断定することはできません。
対側支配と、左右の手の協調
手の運動には、主に反対側の大脳半球の運動野が関わります。これは対側支配と呼ばれ、右手には主に左の、左手には主に右の大脳半球が関わるということです。[1]
ただし、左右の手がそれぞれ独立した脳領域だけで動いているわけではありません。両手の精密なタイミングや動きの協調には、左右の運動関連領域の連携を含むネットワークが関わります。[2]
この知見を背景に、練習では左右の小指の役割が移る「つなぎ目」にも目を向けてみましょう。
どのキーを離し、どのキーを押すのか。そのタイミングが、音のつながりにどう表れているか。
これは指導上の確認方法です。「対側支配だから切り替えに必ず遅れが出る」という意味ではありません。また、ここで紹介した研究は、ローズNo.14の運指練習を直接検証したものではありません。
練習では「つなぎ目」を確かめ、フレーズへ戻す
運指を決める:前後の音を見てL/Rを書き込みます。
短く取り出す:つまずくところの前の音・切り替わる音・次の音を、無理のないテンポでつなぎます。
音と動きを確認する:余計な音や途切れが入らないか、指の移動に無理がないかを確かめます。
フレーズへ戻す:前後の音を少しずつ戻し、慣れてきたら指だけでなく、フレーズの方向や表情へ注意を戻します。
初めは、新しい運指の方が慣れずに難しく感じることもあります。一度の比較だけで決めず、動きを覚えたうえで、音と身体の両方から確かめましょう。
練習量を増やす前に、選択を見直す
「指が回らない」は、練習量や指の速さだけの問題とは限りません。
いつもの運指を繰り返す前に、その一節に合う運指を選ぶことで、演奏のしやすさが大きく変わることがあります。
音の運指を知っていることと、音の並びに合う運指を選べることは、別のこと。
いつもつまずく一節で、ぜひその違いを見つけてみてください。
クラリネットの小指・運指に関するよくある質問
クラリネットで指が回らないのは練習不足ですか?
練習不足とは限らず、前後の音に合わない運指や、左右の指のタイミングが影響していることもあります。練習量を増やす前に、どの音の間でつまずくのか、使っている運指で無理なくつなげられるかを確認してみましょう。
小指は左右どちらで取るのが正解ですか?
左右どちらの小指でも出せる音は、その音だけでなく、前後の音へのつながりを考えて選びます。同じ小指で別のキーへ続けて移動する負担を避けられるかを確認し、音色・音程や楽器の仕様も踏まえて決めましょう。
音階で覚えた運指を、曲でもそのまま使えますか?
音階の運指と曲の運指は同じですか?音階で身につけた運指は曲の運指を選ぶ土台になりますが、必ず同じになるわけではありません。曲では跳躍や臨時記号などを含む実際の音の並びに合わせて、左右の小指の選択を見直します。
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