クラリネット本番前メンタルプラクティス|体調不良時の練習方法
- Izumi Fujiyama

- 2025年12月10日
- 読了時間: 6分
山口県柳井市のクラリネット教室、フジヤマクラリネットスタジオです。
コンディションは最悪。それでも本番はやってくる!
2025年12月7日、和木コンサートでフィンジ《5つのバガテル》を演奏しました。
…が、コンディションとしては「これまでで一番悪い」と言ってもいい状態でした。
数日前から風邪をひき、喉の痛みから始まって咳が出るようになり、最後の追い込み練習も満足にできない。
本番当日も「ステージ上で急に咳が出たらどうしよう」という不安と隣り合わせ。
さらに、咳止めなどの薬を飲んで本番に臨むのは人生で初めての経験でした。
演奏時間は10分足らず。
それでも、その10分をどう迎え、どう乗り切るかの背後には、これまでの練習の積み重ねがすべて出てきます。
クラリネット演奏において、本番前のメンタルプラクティスは極めて重要です。本記事では、体調不良時でも実践できる練習方法を紹介します。
1. メンタルプラクティス:頭の中で曲の構成を把握しておく
体調が崩れる前からも、取り組んではいましたが、本番数日前の体調崩れ、十分な練習時間が確保できませんでした。
そんなときに一番助けられたのが、いわゆる「メンタルプラクティス(イメージトレーニング)」です。
運指、変え指
ブレス位置
ピアノとのフレージング
楽章ごとの雰囲気の切り替え
最後の音が消えて、客席の空気が変わる瞬間
こうした流れを、実際に吹かなくても、頭の中でゆっくり何度も「再生」しておきました。
ポイントは、「理想の自分」ではなく
“今の自分のコンディションでもできる現実的なフレーズ感”でイメージすること。
息をどこで吸うか
フレーズの山をどこに置くか
不安定な音は、どんなイメージで支えるか
これらを事前に整理し、
「体調が悪くても、ここまでは絶対に守る」という“最低ライン”の設計をしておいたことで、
本番中にパニックにならずにすみました。
2. パフォーマンスプラクティス:本番を想定した「通し練習」の積み重ね
もうひとつ、やっておいて良かったのが、
「本番モード」での通し練習を、事前に何度も経験しておいたことです。
具体的には:
練習室以外での練習
途中で止まらない「一発勝負」の通し
録音・録画を回して、後から自分でチェック
を、体調を崩す前の段階から繰り返していました。
これをしておいたおかげで、本番当日は
「体調は最悪だけれど、この流れで本番を乗り切るという道筋はもう身体が知っている」
という感覚がありました。
ステージ上で新しいことをしようとすると、
集中力をどんどん消耗してしまいます。
事前に「本番と同じ手順」を何度も練習しておくことで、
当日は“余計な判断”を減らし、限られた集中力を
音楽の方向性
ピアノとの会話
客席との時間の共有
に回すことができました。
3. インターリーブプラクティス:あえて「ごちゃまぜ」にしておく練習
今回、もうひとつ助けられたのが、
インターリーブプラクティス(interleaved practice) です。
これは、ひとつの曲や一部分だけをひたすら繰り返すのではなく、
楽章を入れ替えて練習する
難しい部分と比較的やさしい部分を交互にやる
他のレパートリーやエチュードと混ぜて吹く
といった形で、あえて“ごちゃまぜ”に練習する方法です。
一見遠回りに見えるのですが、実際の本番は
突然集中が切れる瞬間がある
客席の物音や、自分の体調に意識が持っていかれることがある
予想していなかったところで不安が出てくる
など、「まっすぐ一直線」には進みません。
インターリーブプラクティスをしていたことで、
予想外のところから吹き始めても、すぐに流れに戻れる
集中が乱れても、フレーズの“地図”を思い出せる
どこで切れても、もう一度ストーリーに乗せ直すことができる
といった“回復力”が、少しずつ育っていたように感じます。
本番の最中にも、「あ、今すこし咳が出そうだな」と感じた瞬間に
フレーズの設計を微調整しながら、なんとか音楽の流れを切らずに済んだのは、
こうした「ごちゃまぜ練習」のおかげでした。
4. ノア・カゲヤマ氏のメソッドと「練習改善ラボ」
ここで紹介している
メンタルプラクティス
パフォーマンスプラクティス
インターリーブプラクティス
といった考え方は、私が現在学んでいる演奏心理学の分野で大きな影響を受けている、
ノア・カゲヤマ(Noa Kageyama)氏が提案するメソッドに基づいています。
私は、自身の演奏や指導のなかでこれらの方法を実践しつつ、
「練習改善ラボ」という形で、その導入部分を日本語でわかりやすく紹介しています。
難しい理論をかみ砕いて
日々の練習にどう落とし込めるか
「本番で力を発揮するために、どんな準備ができるのか」
といった視点から、少しずつ共有しているところです。
今回の和木コンサートでの経験は、
まさにこのメソッドたちが「机上の空論ではなく、実際に支えになってくれる」と実感する機会にもなりました。
5. 「最悪のコンディション」がくれた学び
今回の和木コンサートは、体調だけを見れば間違いなく「最悪」でした。
それでも、終わってみると
音楽そのものに委ねる感覚
共演者との呼吸への信頼
ホールスタッフや聴き手の存在への感謝
を、これまで以上に強く感じる本番になりました。
そして何より、
「本番は、その日のベストコンディションで迎えられるとは限らない」
「だからこそ、“最悪の状態でもなんとか形にできる”ための練習が必要」
という事実を、身体で理解する機会になりました。
今回ご紹介した
メンタルプラクティス
パフォーマンスプラクティス(本番シミュレーション)
インターリーブプラクティス
は、どれも派手ではないけれど、
「いつも通りに吹けない日」に、静かに力を発揮してくれる練習法です。
これからも私自身の演奏づくりのなかで、
そして生徒さんたちとのレッスンの中でも、
「どんなコンディションでも、その日の一番いい音楽を届ける」ための土台として、
引き続き大切に育てていきたいと思います。
もっと深く学びたい方へ
もしこの記事を読んで、
本番で緊張や不安に飲み込まれてしまう
練習ではできるのに、本番になるとうまくいかない
「気合い」や「根性」以外の方法を知りたい
と感じた方は、ぜひ私の「練習改善ラボ」のコンテンツも覗いてみてください。
演奏心理学の知見をベースに、
メンタルプラクティスの具体的なやり方
本番モードでの通し練習の組み立て方
インターリーブプラクティスを日々の練習に取り入れるコツ
などを、クラリネット奏者はもちろん、他の楽器の方にも応用できる形で紹介しています。
「最悪のコンディションでも、いまの自分のベストを届けられる」
そんな本番を、一緒に増やしていきましょう。
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